個人事業主としての活動を始める際に、開業届を提出するかどうかは重要な選択です。
多くの個人事業主がこの決断に迷う理由は、開業届を出すことのメリットとデメリットが両方存在するためです。
結論から言うと、開業届を出した方が節税面では有利になることが多くなります。
本記事では、開業届を出さない場合の影響や、提出することによるメリットとデメリットについて詳しく解説します。

個人事業主は開業届は出さない方がいい?

初めて個人事業主として事業を始める場合、開業届を出したほうがいいのか迷ってしまいますよね。
開業届を出さなくても、罰則や罰金を受ける心配がないことを覚えておいてください。
開業届は義務ではない
個人事業主として活動を始める際に、開業届を提出することは義務ではありません。
開業届を提出しなくても事業を開始することは可能で、どれだけ収入が多くなっても罰則はありません。
開業届を提出しなくても、問題なく事業運営を始められます。
開業届を出さなくても確定申告は必要
開業届を出さない場合でも、事業所得がある限り毎年の確定申告は必要です。
確定申告は、年間の収入と支出を報告し、所得税を計算するための重要な手続きです。
この確定申告を怠ると、延滞税や無申告加算税が課されることがあります。
延滞税は期限内に納税しなかった場合に発生する追加の税金で、無申告加算税は期限内に申告を行わなかった場合に課される罰金です。
事業を始めたばかりの個人事業主は、無用な罰金を取られないように確定申告に関する知識を身につけることが重要です。
確定申告を適切に行うことで事業の透明性を保ち、税務署とのトラブルを避けられます。
個人事業主が開業届を出す5つのメリット

個人事業主が開業届を出すと、以下のようなメリットがあります。
- 青色申告で節税できる
- 赤字の繰り越しができる
- 家族への給与を経費にできる場合がある
- 小規模企業共済に加入できる
- 補助金や助成金の申請できる
多くの節税や補助金を使う際は、開業届が必要になります。
具体的にどのような節税効果や補助金を利用できるのか解説します。
青色申告で節税できる
個人事業主が開業届を提出することで、青色申告を使った節税ができます。
青色申告を利用することで、最大65万円の特別控除を受けることが可能で、確定申告時に節税できます。
通常の白色申告は税制上の優遇措置がないので、青色申告は税制面で有利になる制度です。
青色申告をするためには、開業届とは別に「所得税の青色申告承認申請手続」と呼ばれる書類が必要です。
開業届と同時に提出できるので、節税をしたい個人事業主は忘れずに申請しましょう。
赤字の繰り越しができる
青色申告の特典の1つとして、事業の赤字を翌年以降3年間にわたって繰り越せるようになります。
この制度は、初年度に赤字が発生しやすい個人事業主にとても有効な制度です。
事業を始めたばかりの個人事業主が初年度に赤字を出した場合、その赤字を翌年以降の黒字と相殺できるため、節税できます。
赤字の繰り越しは、個人事業を支援する重要な制度です。
また、赤字の繰り越しによって、事業が軌道に乗るまで税金の支払いを抑えることもできます。
赤字の繰り越しは、初期段階の事業において大きなメリットをもたらす制度といえます。
家族への給与を経費にできる場合がある
青色申告をすることで、家族従業員に支払う給与を経費として認められるようになる可能性があります。
事業に従事する配偶者や子供などへの給与を経費として計上することで、事業所得を減少できます。
世帯収入は同じでも、給与を経費にすることで納税額が減少し、節税が可能です。
ただし、この特典を受けるためには、以下の点を証明する必要があります。
- 青色申告を行う事業主と生計を1つにする配偶者や親族であること
- 年間を通じて6ヶ月を超える期間働いていること
- 「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出していること
労働時間や業務内容を明確にし、適切な給与を支払っていることを証明できなければ経費として認められません。
また、税務署に対して適切な手続きを行い、事前に確認を受けることが重要です。
小規模企業共済に加入できる
開業届を提出することで、小規模企業共済に加入できます。
小規模企業共済は、個人事業主が将来の退職金を準備するための制度です。
小規模企業共済に加入することで毎月の掛金が全額所得控除の対象となり、節税効果が期待できます。
さらに、小規模企業共済に加入することで、将来を見越した資産形成が可能です。
掛金は、事業を引退する際に受け取る退職金や、老後の生活を支える年金として活用できるでしょう。
小規模企業共済は、個人事業主にとって重要な節税対策で、将来にわたって生活設計を支える仕組みです。
補助金や助成金の申請できる
開業届を提出することで、公的な補助金や助成金の申請が可能になります。
特に、創業初期にはこれらの資金が大きな助けとなることが多々あります。
補助金や助成金は、事業の成長を支援するための重要な資金源で、事業運営をスムーズに進めるために重要です。
具体的には、新しい設備の導入や事業の拡大に必要な資金を補助金や助成金で賄うことで、自己資金の負担を軽減できます。
補助金や助成金の申請は、資金ショートしやすい個人事業主にとって大きなメリットとなります。
個人事業主が開業届を出す3つのデメリット

個人事業主は、開業届を出すことで以下のようなデメリットも発生します。
- 失業保険がもらえなくなる
- 社会保険の扶養から外れる可能性がある
- 帳簿を作成しなくてはいけない
特に、会社を辞めた直後で失業保険を受給している場合は、打ち切りになってしまうので注意しましょう。
失業保険がもらえなくなる
個人事業主として開業届を提出すると、雇用保険の対象外となるため失業保険を受け取れなります。
雇用保険は、企業に雇用されている労働者が失業した際に、一定期間の収入を補償する制度です。
個人事業主は自らの事業を営むため、雇用保険の対象には含まれません。
事業が軌道に乗るまでの間は、収入が不安定になる可能性が高くなります。
特に、事業の初期段階では十分な資金計画を立てておくことが重要です。
事業の開始前に生活費や運転資金を確保し、収入が安定するまでの期間を乗り切る準備をしておきましょう。
社会保険の扶養から外れる可能性がある
開業届を出して所得が一定額を超えると、配偶者の社会保険の扶養から外れる可能性があります。
扶養から外れると、個人事業主自身が国民健康保険や国民年金に加入する必要が生じるため、税負担が大きくなるかもしれません。
健康保険組合によって「年収130万円まで被扶養者として認める」「所得130万円まで被扶養者として認める」など条件が異なるので、事前に確認しておきましょう。
国民健康保険や国民年金の保険料は、個人事業主の所得に応じて決定されるため、事業所得が増加すると、その分の保険料も増加します。
事業所得が増加することに伴う保険料や税金を事前に考慮し、適切な準備をしておくことが大切です。
帳簿を作成しなくてはいけない
青色申告を行うためには、複式簿記の作成が必要となります。
これは、事業の収支を正確に記録し、税務署に対して正確な申告を行うためのものです。
複式簿記は収入と支出を二重に記録する方法で、事業の全ての取引を詳細に記録することが求められます。
事業の財務状況を正確に把握できる反面、慣れるまでには時間と労力がかかります。
特に、会計や簿記に不慣れな個人事業主にとっては、帳簿の作成が大きな負担となりかねません。
帳簿の作成は短期的には負担となりますが、節税効果が高いので長期的な事業運営には不可欠です。
個人事業主が開業届を出さずに困った場面

個人事業主が開業届を出さないと困る場面もあります。
具体例として、クレジットカードと銀行口座を例に挙げたので参考にしてください。
クレジットカードが作れなかった
個人事業主が開業届を提出しない場合、クレジットカードを作成することが難しくなります。
金融機関が個人事業主の事業の存在や具体的な収入を確認できないためです。
クレジットカードは、仕入れや交通費、広告費などの支払いを一括で管理する際にとても便利です。
また、クレジットカードの利用明細をそのまま経費計上に利用できるため、経理業務の効率化にもつながります。
開業届を提出しない場合は、会社を辞める前にクレジットカードを取得し、経費管理やキャッシュフローの改善を図りましょう。
屋号で銀行口座を作れなかった
個人事業主が開業届を出さないと、屋号名義で銀行口座を開設できません。
銀行が事業の実態を確認するために開業届の提示を求めるためです。
事業収入や経費を個人の銀行口座と混在させると、経理処理が複雑になって、正確な収支管理が難しくなります。
屋号名義の銀行口座を開設することで、経理処理が簡便になるだけではなく、事業の透明性や信頼性が向上します。
さらに、税務申告の際にも事業収支を正確に報告することができるので、税務署とのトラブルを避けやすくなるでしょう。
より多く節税をしたい個人事業主は開業届を出したほうがいい

個人事業主が開業届を提出するかどうかは、メリットとデメリットの両方を慎重に考慮する必要があります。
節税効果や補助金の申請などのメリットを最大限に活かすためには、開業届を出すほうが有利です。
さらに節税できる手法を探している個人事業主には、社会保険への加入をおすすめしています。
全国個人事業厚生会では加入後の社会保険料を無料でシミュレーションできるので、以下のリンクからお気軽にお問い合わせください。


